柴田淳
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デビュー23周年。コロナ禍に救急救命士の資格取得。
脱セルフプロデュースで魅せる新たな柴田淳。
──4年ぶりのアルバム「901号室のおばけ」は、どんなアルバムでしょうか?
リスタートというか、柴田淳の再出発を意味するアルバムです。コロナ前の柴田淳と今の柴田淳は一緒なのですが、ちょっと違うなって思ってもらえる一枚になりました。
──それはどういうことですか?
私には高校生のときに、救急救命士の夢と歌手の夢がありました。ただ、そのとき私は歌手を選んで今に至ります。2020年にコロナで音楽活動が何もできなくなってしまいました。そのとき、衝動的に救急救命士の資格を取りたいと思って、調べたらちょうど専門学校に入学ができる時期だったので事務所にも言わずに入学したんです。正直、この年齢まで音楽活動を続けてくると、アウトプットばかり増えてインプットすることが減ってしまっていて、学びたい衝動がすごかったんです。そんな専門学校での学びを経験して、経験する前の柴田淳とは違うものになっていると思います。
──国家試験合格のために専門学校へ通った3年間は、どんな生活だったんですか?
シンガーソングライターとは真逆の生活でした。私の場合は消防系の資格を取る、国家試験に合格するための専門学校なので遅刻や欠席が絶対許されませんでした。毎日6時半に起きてお弁当を作って、夕方帰ってくる生活を月から金までやっていました。命に関わる仕事なので、仕事の合間や空いた時間に勉強するというレベルのものじゃなく、ミュージシャンとはまるで違う人種になったというか生活でしたね。信じられないくらい規則正しかったです。20年以上セルフプロデュースで音楽をやってきて、自己責任というか、自分で決めることがほとんどだったのですが、学校では先生の言う通りに動くという受け身の姿勢で、自分で決めることがない、というこれまで経験したことがないことの連続でした。
──その生活のあと制作に入られたアルバムは、武部聡志さんプロデュースですが、武部さんとの制作はどのようなものでしたか?
2024年3月に救急救命士の国家試験に合格して、専門学校を卒業して、5月から創作に入りました。3年以上、創作と真逆の生活をしてた人間がいきなりミュージシャンの1番コアなところに戻れと言われても戻れなくて。ほんとの意味で曲創りが分からなくなってました。もっと言うと柴田淳ってどういうキャラだったのかが思い出せなくて。どうしよう?と思った時に、音楽プロデューサーの武部聡志さんが一緒にやりたいって言ってくれていたことを思い出したんです。そこで、武部さんをプロデュースに迎えるのはどうでしょう、ってスタッフに話して。柴田淳を元に戻してくださいっていう感じでお願いしました。悪く捉えられたくはないのですが、そのとき私は自分のことがなかったというか、自分のことが分からなくなっていたので、このタイミングで武部さんにお願いできたのはとても助かりました。武部さんとは、デビュー当時からいつか一緒にやろうねっていう話はあったんですが、なかなか縁がなくて。なので、今回タッグを組めたことに運命を感じるというか、お互いに今だったのかなと感じました。武部さんに全面的に任せて出てきた音が、私がこうしたいという音よりはるかに良いもので。これまでこだわっていた「ボーカルトラックだけは自分でセレクトする」ことも、制作スケジュールが過密でセレクトする時間がなく武部さんに任せざるを得ない状態になったんです。でも、武部さんがセレクトした歌を聞いたら、自分とずれていなくて。なので、今回のアルバムは、柴田淳以外がセレクトした柴田淳ボーカルってこうなんだよっていうところも聞きどころかもしれないと思っています。こういうことも良いんじゃないかって思えるような大人になったのは、学生に戻って先生の言うことを聞くという経験や、このあとお話しますが舞台をやったことも大きかったですね。
──では、このアルバムを通して伝えたいことは何でしょうか?
「私はここにいる」という充実感でしょうか。充実感がある時のアルバムって重さを感じるんですよ。内容がとにかく濃い。柴田淳は、ちゃんとやってるよっていうことを伝えられると思います。かなりの期間、表に出てなかったので待ってくださっているファンの方に声を大にして「柴田淳はここにいるよ」って伝えたい。伝えられるアルバムになったらいいなと思います。
──曲についても教えてください。
「〇〇ちゃん」は、怖いって言われますね。歌い始めが“握りつぶした 継ぎ接ぎのお腹と 捻り千切った 顔のついた首が”ですから。でも実は、私が飼っている犬の話なんです。うちの犬は、ぬいぐるみやおもちゃをめちゃくちゃにしたり、食いちぎって綿を出したりのいたずらをするんです。みんなおぞましい曲だと思って聞いてるけど全然そうじゃない。騙されたって思ってほしいなって。“継き接ぎ”は、破れたぬいぐるみを私が縫い合わせたお腹で。“捻り千切った”は、犬がめちゃくちゃにした姿で。そんな人形が部屋に転がっている。抱きしめられたい可愛い顔の人形が抱きしめられないことがものすごく切ないと感じて。それがまるで自分と重なってしまったという歌です。人形を見てたら、まるで自分を見てるようで辛くなるから、めちゃくちゃにしてくれる犬にあげたのっていう(笑)。また、この曲の始まりがホラー映画の様な音で始まるので、その音にみんなが引っ張られるように書いたところはあります(笑)。そして、伝えたいことは2番にあるんです。気に入らない人やイラつく人の好きじゃないと思う面は、実は自分が持っていて自分で認めたくない部分だったりするという話を聞いた時に、そうかもしれないと思って。誰かのことを鏡にして自分を見ている。認めたくない、聞きたくないのは本当の自分だから、ということを2番に書いています。それも含めて、1番に出てくる人形もまるで自分のように見えるという歌です。
「喫茶店」は、この歳だからできた歌かなと思いますね。聴いた方がどう想像するか分からないですけど、決してスタバじゃないアンティークなカフェで、こっそり隣の人に恋してるっていう、控えめな感じで。そこにも若さがないなって(笑)。そういう描写が増えるにつれてですね、私、大人になったんだなと感じますね。
──10 曲目の「月のあさひへ」は、昨年 10 月の初出演舞台「ETERNAL GHOST FISH」のために書き下ろした曲ですが、舞台経験はどのようなものでしたか?
舞台は、その人の作品の一部になるっていうのがものすごく新鮮でした。お芝居のステージは私のステージじゃなくて、みんなのステージなんですよね。さらに会話のキャッチボールで成り立ってる場所なので、私がつまずいたら話が進んでいかないんです。ある時セリフがポーンって飛んたことがあって、なんとか取り繕ってやったんですけど、1人のミスがドミノ倒しのようにその芝居全部を壊すと感じました。でも、舞台は楽しくて楽しくて仕方なくて、全然緊張しなかったです。私の役は、最後に「ありがとう」というセリフを言うんですが、右も左も分からない私をみなさんが支えてくれて、セリフが飛んだ時もフォローしてくれて、私にアウェイな感じを作らないような雰囲気づくりをしてくれたことで、リアルな「ありがとう」になりました。
──最後に、救急救命士になられた理由について「一大事に便利な一般人」になる、「救急救命士の資格取得という捨ててきた夢を回収しに行く」とおっしゃっていましたが、実際に手にされてどのような気持ちですか?
歌は人の気持ちを救うといわれることがありますが、それは私が書いた曲で、みなさんが勝手に救われてくれたんです。私は曲を書いただけ。それと違って、救急救命はリアルに人の命を救う行為なんだと感じています。そして、救急隊やお医者さんが命を救うんじゃなくて、第一発見者が命を救う。だから、ファンの方に、一次救命のスキルを身につけてもらうイベントができたらなと思っています。
インタビュー&ライティング:山本耀太・伊藤 緑
Profile
2001年デビューのシンガーソングライター。シンガーソングライターとしての活動の他にも、楽曲提供、ナレーション、ラジオパーソナリティなど幅広く活躍している。2023年、演劇という新たな世界に挑む。
コロナ禍を経て、救急救命士の資格取得の為、専門学校へ通いながら活動。2024年3月、第47回救急救命士国家試験に合格。
Webサイト:https://www.shibajun.jp/
X:@shibatajun
Instagram:@shibatajun_official
YouTube:@shibatajunofficial
Release Information
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