結成5周年記念日をファンと祝う、4人体制で初のワンマン”home party”! リュックと添い寝ごはん

リュックと添い寝ごはん
2022/11/10
東京キネマ倶楽部
何気ない日常の中で見落としてしまいそうになる小さな幸せ。そんな、今あたりまえにあるものの大切さを思い出させてくれるのがリュックと添い寝ごはんの音楽だ。名前を聞いたらまずその意味を考えずにはいられないロックバンド。偶然生まれた不思議としっくりくるその単語の並びを冠して5年。結成時は高校生だった彼らは20歳を超え、バンドの軌跡とありったけの感謝を伝えるパーティーを開いた。
11月10日、リュックと添い寝ごはんがワンマンライブ”home party”を東京キネマ倶楽部で開催した。ぬん(G)が加入後の4人体制では初のワンマンであり、結成5周年を祝うスペシャルな夜。まず登壇したのは「ウンチョコチョコチョコピー!」でお馴染みのお笑い芸人、GO!皆川。”5”に因んだスペシャルゲストとして、持ちネタで会場を笑いの渦に巻き込む。客席が十分に温まったところで、いよいよライブがスタート。前日にリリースされた最新アルバム『四季』のジャケット写真で着用しているセットアップに身を包み、ぬん、宮澤あかり(Dr)、堂免英敬(Ba)、松本ユウ(Vo/G)の順に登場。円陣代わりに気合を入れるため、そして緊張をほぐすためにいつも4人でしているじゃんけんを終え、松本のギターがこだまするとその一瞬で会場は高揚感でいっぱいになった。

1曲目は「東京少女」。メンバーが20歳を超えたときにリリースされたこの曲。日常を歌い続けてきたバンドの軌跡との重なりに、すでに胸が熱くなる。続く「青春日記」は、青春の真っ直中がテーマでありながら”あの頃に描いてた夢や希望はもうないさ”という歌詞が印象的。しかし、それは決して諦めなんかじゃない。同じ日なんてないのだから、今ここからもっと素晴らしい青春を始めよう。そんな希望に満ちた曲なのだ。5年間の活動を経て、4人での新体制で再スタートを切ったバンドの明るい未来を感じずにはいられなかった。
「ようこそ! ”home party”にお越しくださりほんとにありがとうございます! 自由に気ままに、最後まで楽しんでってください!」喜びと感謝の言葉が松本から発せられ、ライブはさらに熱を帯びていく。松本がギターをハンドマイクに持ち替え「everyday」のイントロが流れ始めたかと思うと、GO!皆川が再登場。堂免のベースソロに合わせ、松本と一緒にギャグを披露するという珍場面も。これにはメンバーからも観客からも笑いが起こる。パーティーを彩りたいという遊び心満載の仕掛け。その中で彼ら自身も全力で楽しんでいるというのが伝わってきて、この夜の特別感を膨らませていく。
満員の客席を見渡した宮澤が「いっぱいだね」と呟き、5年間を振り返りながら感動を伝える。ワンマンデビューを祝う盛大な拍手にぬんがハイテンションで叫び返したり、最近サウナがブームらしい堂免が「ライブもサウナも限界まで頑張る」と意気込みを見せたりとやる気十分なMCを挟んで、ライブは中盤へ。松本の「今日は5年目ということで、バンドを組んだ高校の頃の曲をやろうかなと思います!」という言葉を合図に、「モノラル」と「SAYONARA」を披露。どちらもCD未収録曲で、活動初期から今日までを余すことなく振り返るセットリストに思わずうっとりと聴き入ってしまった。

その後、アコースティックにセットを転換。滅多にやらないというこの編成も、記念ワンマンのために彼らが用意したものだ。今回の会場キネマ倶楽部はレトロ感漂う洋館テイストで、入口カウンターに敷かれた絨毯やステージ上のミラーボールなどの装飾、2階までの吹き抜け構造が昔ながらのバーのような雰囲気を醸し出している。その会場とアコースティックの相性は抜群で、客席全体が音楽に身を委ねてリラックスした雰囲気に包まれる。作ったときからキネマ倶楽部でやることを夢見ていた「23」、幸せや理想を詰め込んだという「アップルパイ」を演奏。ピアノとベースの柔らかい響きがキネマ倶楽部に溶け込んで、幻想的な空間を作り出した。
再びバンドセットに転換し「みんなのうた」を披露。どんなに些細でも伝えることが誰かの励みになるから、周りの人にいろんな気持ちを伝えてほしい。松本なりのラブ&ピースを表現したハートフルな曲に心が揺さぶられる。拍手が起きたかと思うと、「ここから後半戦です! 盛り上がっていけますか!」とガラリと流れが変わる。立て続けに鳴らされた「Night Gimmick」と「あたらしい朝」は薄暗い場内を一気に照らし上げた照明も相まって、本当に夜から朝へ時間が流れたかのような感覚を覚えた。ライブ終盤、躍動感みなぎる「ノーマル」「グッバイトレイン」でボルテージは最高潮に。メンバーと観客との心的距離が最接近し、会場全体の一体感はステージと客席の境目を優に超えていく。MCで感謝の気持ちを存分に伝え、楽しみが盛りだくさんな本編を締めくくった。

あたたかな拍手がアンコールを求める手拍子に変わり、再びメンバーがステージへ。「みんな家族だから。いつかは僕らの曲を聴かなくなっちゃうかもしんないけど、また戻ってきてくれたらいいから。僕らはそんな場所、そんなバンドなので。いつでも帰ってきてください! 僕らはずっと待ってるのでね」松本がファンへの感謝とバンドの在り方を熱く語り、「Thank you for the Music」へなだれ込む。”旅の途中に出会ってくれて僕は幸せです どうかこれからもあなたの心にいさせて”という歌詞が松本の言葉と重なってこみあげてくるものがある。最後の曲はライブタイトル”home party”に相応しい「home」。家に帰れば音楽が鳴っている、それくらい日常に寄り添った曲たちでファンとの時間を分かち合った。幸せたっぷりの余韻を残し全曲を終え、GO!皆川を交えての写真撮影でライブは幕を閉じた。
パーティーにぴったりなお楽しみ尽くしの2時間。あの頃の青春や季節の一幕など、たくさんの日常を切り取って”今”を奏でる曲たちに聴き惚れ、休み時間の友達同士のような和気藹々としたMCで笑った。いつもよりちょっと特別な夜、4人はファンに祝福され活動6年目へのスタートを切った。ただ、この数字はあまり重要ではないのかもしれない。バンドにとっても私たちにとっても、音楽を鳴らし続けるリュックと添い寝ごはんのもとにみんなで集まることが、数字よりもはるかに大切でなによりの幸せなのだ。
ライティング:金子実夏子
撮影:Momo Angela

セットリスト
1.東京少女
2.青春日記
3.PLAY
4.手と手
5.くだらないまま
6.everyday
7.ホリデイ
8.わたし
9.モノラル
10.SAYONARA
11.23
12.アップルパイ
13.ふたり暮らし
14.みんなのうた
15.Night Gimmick
16.あたらしい朝
17.ノーマル
18.グッバイトレイン
En1.Thank you for the Music
En2.home
Profile
松本ユウ(Vo/G)、堂免英敬(Ba)、宮澤あかり(Dr)、ぬん(G)からなる4人組バンド。2017年結成、平均年齢は21歳。2022年10月5日「Thank you for the Music」の配信リリースとともに、サポートギタリストぬんの正式加入を発表。11月9日には、4人体制で初めてのフルアルバムとなる『四季』をリリース。
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